お願いだから、つかまえて

で。

…で?

「あれ…」

…寝てた。

はっ?

どのタイミングで…
というか、ここは。

「あ、起きました?」

…佐々木くんのお宅でした、はい…
ガバッと起きあがって、部屋中を見渡す。
佐々木くんが一人で空き瓶を集めているところだった。

「…香苗たちは…」
「終電で帰りましたよ。」
「ですよね…」

腕時計を見ると、深夜一時を過ぎている。

…何をやってるんだ私というやつはああああ!!!

「時々あるらしいですね。」
「は、何が…」
「寝落ち。お友達が言ってました。よっぽど疲れてるんだろうから、寝かせてやってくれと。」
「すみませっ…」
「いいですよ、別に。」

香苗っ、叩き起こしてくれればいいものを!!

「…重ね重ね申し訳ありませんが、お水を一杯頂けますでしょうか…?」
「ああ、はい。」

瓶を詰めたビニール袋を床に置き、佐々木くんは冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを、ガラスのコップと一緒に持ってきて、注いでくれる。

「どうしますか、このまま泊まっていきます?」

私が上半身を起こしたので、空いたベッドのスペースに佐々木くんが腰かけながら、それを渡してくれた。

「いえ、めっそうもない、タクシー拾って帰ります。ほんと、すみません。」
「そうですか。」

ああ、酒の後の水って、なんでこんな美味しいのかしら。
ちょっと、もう一杯。
ローテーブルに佐々木くんが置いたペットボトルに手を伸ばして水を注ぎ、座り直す。

と、その位置がちょっと近過ぎたかな、だって好みの顔が、こんな間近にーー…

「…え?」

間近というか。
唇に柔らかいものが当たって。

だから、つまり。

キス、されてた。



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