お願いだから、つかまえて
佐々木くんの部屋に上がるのは、あのことがあるから、抵抗があったけど、この際それが一番いい気がした。
「そしたら、僕の服、貸しますから。」
「あ、そんな、いいですよ。」
「いや、これは押しつけで、その代わり、お願いがあるんですが…」
「あ、はい?」
「山園さんの鉄板やら網やら、洗うの手伝ってくれませんか?」
「ああー…そうですよね。」
突然の雨だったので、ろくに流しもせずゴミ袋に突っ込んだ諸々の器具を思い出した。
しかもその他のものも水浸しだから、乾かすなり拭くなりしないといけないのは明白で、それを佐々木くんが一人でやらなくてはいけないのはおかしな話だった。
しかも、そういうのは、この人の苦手な分野の作業のはずだった。
「わかりました。」
「よかった…」
きっと本当にほっとしている。笑ってしまった。
佐々木くんの部屋は、残念ながら一ヶ月の間にまた散らかり放題になっていた。
そんな中で佐々木くんは、バスタオルとトレーナーと半ズボンを引っ張り出して、佐々木くんお風呂入って下さいと言うのにガンとして頷かず、それらを押しつけて、私をバスルームに送り出した。
私は佐々木くんの部屋でお風呂に入るつもりはなかったんだけど…と思いながらもシャワーだけ浴びると、冷えた身体が暖まって、やっぱりこれでよかったかもと思った。
戻ってきた私に、佐々木くんはドライヤーと暖かいココアを用意しておいてくれて、それからやっとバスルームに向かってくれた。
「ちゃんとお湯に浸かったほうがいいですよ。」
という言葉は無視された。