お願いだから、つかまえて
なんかな。さらっと至れり尽くせりなんだよな、いつも…
居心地がいいような、悪いような。
私は髪を乾かし、ありがたくココアを頂いた。
佐々木くんが出てきてから、私達はせっせと働いた。
地下の駐車場がガラ空きだったので、そこに山園さんの物をフリーマーケットばりに並べ、次々にタオルで拭いていく。再び車を出すまではそこに広げたまま乾かすことにし、調理に使ったものを部屋まで運び、私が洗う。
集中してお互い黙り込んだり、雑談をしたり。
なんだか熟年夫婦みたいだ、と思ったりした。
ようやく全部終わった頃には夜になっていた。
「お腹空きましたねえ…」
佐々木くんがぼやいて、確かに、と私も深く頷いてしまう。
「お好み焼き、食べますか。」
その誘惑たるや。
もう。食べたいし。
ていうか、ビール飲みたいし。
「うーん…」
でも帰ったほうがいいな。
と思うのに。
佐々木くんは私の返事を待たず、キッチンに立ってしまう。
うーん。なんかでも、お尻に根が生えたみたいに、私は動くのが億劫だった。
雨は全然止む気配がない。だけどハンガーにかけていた私の服は生乾きにしろ、もう着られるだろうし、傘さえ借りれば、電車に乗って帰れる。
でもそうしたらまた傘を返す為に会わなくちゃとか。
大した回数顔を合わせてわけでもないのに、佐々木くんと全く会わないのはもう不自然で。
会わずにいる方法を考えるほうが、よっぽど大変なことな気がした。
「…あっ」
そこまで思って、突然思い出した。
「佐々木くん、私借りてた本をっ…」