お願いだから、つかまえて
私が部屋の隅に飛んでいって自分の荷物からそれを取り出した時には、既に遅し。
一番上の本はまあまあ濡れて、ページはまとめて波打った形に固定されつつあった。
「あ、あーーー。ごめんなさい! 新しいの買います!」
ほら、こうやって、次々に。
会う用事なんかいくらでもできてしまう。
「ああいいですよ、そんな。読めれば。」
佐々木くんがのっそりやって来て、その様子を覗き込んで言う。
「あ、そうだ。それより…」
と何かを思い出したように、パソコンを置いてあるデスクの何やらカオスなスペースから、リボンのついた可愛らしい小さな袋を見つけ出し、私に渡した。
「お誕生日だったんですよね。一応これプレゼント。気に入るかどうかわかりませんけど。」
「…………」
嘘、そんなこと、覚えてたの?
プレゼント?
佐々木くんが?
「ありがとう、ございます…」
「いえ。」
またすたすたとキッチンに戻っていく。
…この人、やっぱり私のこと、好きなのかな?
でも、いまいち、態度に表れていない。…ような。
恋愛偏差値の低い私には、どう判断していいかさっぱりわからない。
とりあえず、袋を開けてみると。
「…あ、可愛い…」
薄いピンクと、紫色の間のような色合いの、柔らかい革の。
ブックカバーだった。
うー、好みドンピシャで、来た。
やめてよ、なんなの?
これ以上私を惹きつけないで。私をつかまえる気なんか、ないくせに。