僕らが守るから
どしゃ降りの公園で……
僕はその日、どしゃ降りの公園で
他校の先輩を見つけました。

少しだけ、面識のある彼は
傘もささずにベンチに座っていて……

『七夜さん?』

鞄を持ち直して
七夜さんに近づいてみました。

『ん? あぁ、秋鹿か
久しぶりだな』

彼は虚ろな目をして
返事をしながらも
何処か遠くを見ているようでした。

『風邪ひきますよ?』

話しかけながら
傘を彼の方に傾けたその時、
横に置かれた
鞄に気が付き、家出でも
して来たのかと思いましたが
その考えは一瞬で消えました。

本当に家出なら
友人の家に行けばいいだけですから。

『とりあえず、
僕の家に行きましょう』

どっちにしても
制服のまま夜まで
此処にいれば
風邪をひくだけでなく
補導されてしまいますからね。

『僕も寒くなって来ましたし
何時までも、此処にいる訳には
いかないんですから』

事情は彼が話してくれない限り
分かりませんがただ事では
ないのは確かです。

家に着き、お母さんを呼びました。

『お母さん、すみませんが
タオルを二枚とってもらえますか』

二枚のバスタオル持って来た
お母さんは僕らを見て
大慌てでお風呂場へ。

「あらあら、大変❢❢

二人共、着替えちゃいなさい」

ある程度拭いて、
七夜さんを連れて洗面所へ。

僕の服では小さいので
お母さんがお父さんの服を
持って来てくれました。

お風呂が沸くまでは
リビングで待つことに。

「徹也が誰かを
連れてくるなんて珍しいわね」

僕らにお茶を配りながら
お母さんが笑いました。

そう言われれば、
僕が誰かを家に連れて来たのは
小学校以来かも知れませんね。

『お名前、訊いてもいいかしら?』

お母さんの言葉に七夜さんは
顔を上げてわりとはっきりした
声で名前を告げました。

『七夜空煌といいます。

突然、お邪魔してすみません』

机に指で一字一字書きながら
説明しています。

七つの夜の空が煌めくですか……

名字は知っていましたが
下の名前は今知りました。

「空煌君ね。

そんなこと気にしなくていいのよ」

「私は徹也の母親で秋鹿紗和です。

紗和さんって
呼んでくれると嬉しいわ」

お母さん、
抜け目がありませんね(苦笑)

話している間に
少し落ち着いたようで
僕まで謝られてしまいました。

『お母さん、ずるいです❢❢

僕のことも徹也と呼んで下さい』

そんな僕らを見て
七夜さんがやっと笑ってくれました。

『徹也、紗和さんに
そんな競うように言わなくも(笑)

俺も空煌でよろしく』

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「お風呂、沸いたから
二人で入って来なさい」

空煌さんが鞄から
着替えを出すのを待ち
二人でお風呂場へ。
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