恋のお試し期間


「はい」

返事をすると耳元から離れ、きちんと見つめ合う。

「嬉しいよ。…すごく」

佐伯はあの頃と何ら変わらない、優しく大人な微笑み。
里真はちょっとだけそれに見惚れて。でも、負けじと見つめ返す。

言うなら今しかない。

勇気を出せ。

私の未来の為に。

「正式に彼氏になってもらっても、いいですか」

もうお試しなんかやめて、本物の恋人同士になる。
自分なんかが試すなんておこがましいと思っていた。
けど、試せてよかったのかもしれない。なんて偉そうに。

過去のことを考えても仕方ない、良い思い出として。
苦い記憶として。抱えて生きていくしか無い。

今が幸せだから、何時かは三波の事も笑って許せるだろうか。

矢田と佐伯の間に何があったのかは結局深い闇の中だけど。



「いいの?」

佐伯は驚いた顔をして尋ね返す。

「は、はい」
「そっか。じゃあ、俺さっきの言葉撤回しなきゃいけないんだ」
「え?」
「もうどんな理由でも俺以外の男の事をココに入れるのは禁止。後は一緒。
君は何処で何をしたっていい、束縛はしない。監視もしない。自由だよ」

佐伯がココ、と言ったのは里真の胸。心臓。

「……」
「君は俺のもので俺は君のものなんだから当然だよね。
あ、俺のココは最初から君しか居ないから。
君以外の女を入れるなんてそんなのありえないから。ずっと安心していいんだよ」
「はい…」
「君に選ばれて嬉しいよ。すごく」


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