恋のお試し期間



「姉貴。ちゃんと渡してきた?」
「うん。ハンカチ」
「うわ。ケチってる!」
「ケチっていうな。だってネクタイしないし靴とかカバンとか趣味知らないし。
どうしようもないじゃん。花なんか貰ったってねえ?」
「ハンカチ貰ってもどうかとおもうぞ母の日じゃないんだから」

家に帰り母の作る昼飯を待っていると同じように席につく裕樹。
彼の提案でしたプレゼントだから当然知っていて気になるようだ。
でもプレゼントがハンカチと聞いて白けきった顔。

「そうよ里真。もうちょっと素敵なものはなかったの?」
「お母さんまで話しに入ってこないでよ」
「ハンカチはねえよな」
「無い無い」
「知らない癖に話し合わせるのやめて。…そんな悪くないってば」

結構いい値段のするの選んだのに。ちょっと不安になってくるじゃない。
里真は食事を終えると部屋でゴロゴロ。自分みがきなどもしない。
フラれるまえはエステに行ったりファッション雑誌で彼の好みを研究したり
でももうそれも意味が無いので雑誌は捨ててエステ所か無駄毛も放置。

こういうのが女としてアウトなんだろうと思ってはいるが

フラれてしまって今はもう立ち上がる気力がない。



『里真ちゃん、ハンカチありがとう。使わせてもらうね』
「いえいえ。よかった気に入ってもらって」

寝転んで漫画を読んでいたらうっかりまた寝てしまって。
携帯の着信音で目がさめた。時刻はもう3時を過ぎた当たり。
なんて実りの無い休日の無駄遣い。

『今日、…何か俺悪い事したのかな』
「え?なんで?」
『だって。ほら、来てくれた時…さ。いつもなら食べてってくれるのに』
「別に深い意味はないので。気にしないでください」

もしかして怒って帰ったみたいに思われたろうか。そんな事ないのに。
むしろ女性客に怒られそうだったので逃げたのが正解なのに。

『そっか。なら、いいんだけど。またいつでも食べに来て』
「はい」
『じゃあ、夜からの仕込みあるからそろそろ切るね』
「がんばってください」
『うん。またね』

電話を切るとまたベッドに倒れこむ。お礼をするつもりが気を使わせるとは。
幾つになってもお兄ちゃんには迷惑をかけるらしい。反省。


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