恋のお試し期間


「ごめんなさい待たせて」
「いいんだよ」
「慶吾さん?」
「あ。うん。里真が居なくて寂しかったんだ。だから少しドライブして帰ろう」
「はい」
「いっぱいキスもしたいしね」
「う。は、はい」

顔を赤らめる里真に何時もの微笑を向けて彼女を車に乗せる。
先に矢田の車が出て行った。特に何も挨拶しないままの別れ。
といっても会社に行けば里真は顔を合わせるので特に何も思わない。

それよりもやっと落ち着いて2人になれたことに安堵。

処女を完全に捨てるという当初の目的も覚悟も打ち砕かれて残念だが。

同時にホッとしている自分が居て。

「どうしたの。今全然関係無い事考えてなかった?」
「え?」

ソレ以上に気になることもあったりして。

「ほら。俺の話しも上の空だし」
「今日はテニス教えてくれてありがとうございます。また教えてください」
「いいけど、さ」

里真の反応に珍しく少し拗ねた口調の佐伯。

「次は…お泊り、で。……行きたいですね」
「部屋は君と一緒?」
「え?あ。…は、はい」
「次は決まったね」
「はい」

だが次の予定を組んだら少しは機嫌を直したようで表情は明るい。

少し寄り道をしながらも家までちゃんと送り届けてくれた。
たっぷりのキスも忘れずにして。疲れた顔をして家に入ったら家族が
どうして!?とまた驚いた顔をする。


もうこのパターンもなれた。


私だってもっと別の違う甘い展開を予想してたのに。


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