熱愛には程遠い、けど。

01 頼りないけど、放っておけない

 大手総合商社に勤めて三年目。今年で契約満期になる。それは私が契約社員だからだ。
私だけでなくこの会社で働く多くの一般職(事務)の女性はみんな契約社員というのがこの会社のあり方。大卒で入社してから期間は三年。希望をすれば契約の延長も可能らしいけどあまり聞かない。現に、三年目に入った今、同じ部署に私より年上の事務の女性は一人もいない。
「おめでとう~! 来月いよいよ挙式ね!」
 女子ロッカーに入れば、五割以上の確率で結婚の話題。また一人結婚が決まって寿退社をするらしい。どこの誰だか知らないけど、おめでとうと心の中でこっそりお祝い。
 この会社に入った女性のほとんどの目的は、この会社に勤める高学歴、高収入、高プライドのハイスペックな男たち。三年という限られた期間の中でいい男をめぐって女同士が火花を散らす。勝者はほんの一部。残りは外で相手を探すか、職を探すか。でも私が見る限り結婚を決めて退社していく女性の方が多くいるように感じる。
 私たちの仕事は誰でも出来るような事務(雑用)。そう、誰でも出来る。だったら、極力容姿の優れた女性を採用したいと言う会社側の思惑は理解できる。現に、この会社に勤める女性は華やかで愛嬌のいい女性が多い。そして次々と若い社員が入れ替わりで入ってくる。男性社員の仕事のモチベーションアップにもなるのでは。
 支度を済ませ早々にロッカーをあとにして自分が所属する総務部へと向かう。商社でなくてもどこにでもあるその部署に所属して三年目。そのせいか、未だに自分の勤める会社の事業内容が謎だ。

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