龍神のとりこ
7.月虹
ぱちぱち、ぱちぱち、、

火がはぜている。
森を歩き、2日目の夜になっていた。
空には月が昇っている。


「コハクはどうして石像にされてたの?」
大きな樹を背に、火を囲んでいた。
辺りは真っ暗な闇。時折遠吠えが聞こえる。

隣で暗闇に目を向けていたコハクの肩が少し動いた気がした。
短い短髪が横顔からも表情を見えやすくしている。

無言。



「あたしはまだ思い出せない。どこにいたとか、何をしてた、とか。」
トーコは諦めて、すいっと自分も顔を真っ暗な闇のほうへ向けた。目を凝らしても真っ暗な闇。まるで何も思い出せない今の自分のようだと思った。


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