龍神のとりこ
「トーコ、あのジンともうひとりの龍神には近づくな。お前が巫女ではなくとも、腹の足し程度にはされるかもしれないからな。」

大きな手でトーコの頭をわさわさと撫でる。



納得いかないのか、俺を見る目が何か言いたげだ。

「余計なことは考えず、俺のそばにいろ。」

剥いた果物をまたひとつトーコの口に近づける。



思わず口元が緩んでしまう。

「ほんとにリスみたいだな。」

トーコが真っ赤になって咳き込む。

「コハクがたくさん食べさせるからっ、ぅっ、ごほっ。」

小さな背中を撫でてやる。
ほんとに面白い奴だ。



俺が笑ったからか?トーコもやっと表情を緩めたようにみえる。





シオウの元へは行けない。

もし万が一、トーコがシオウに見つかれば、
奴の言葉通り、ただの人間のトーコは喰われてしまうかもしれない。




さぁ、どうやって龍神に戻ったものかーーー。
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