あなたのヒロインではないけれど




だけど。


『鵜野さんはご存知ですか? S川のそばにコウノトリが飛来したそうですよ』

「えっ!?」


コウノトリ!


思いがけない氷上さんの切り出しに驚いたけど、めったに耳にすることがない名前に反応してしまいました。


「ほ、本当ですか?」

『はい。同僚が何人も目撃してますが、まださほど知られていないせいかニュースにはなってません。おそらく近いうちに話題になって、見物客がたくさん押し掛けると思いますが。その前にご覧になってみませんか?』


コウノトリ……


日本人ならあまり馴染みがない鳥だけど、名前だけなら知られてる。かつて日本にも生息していたけど、今は絶滅してごく稀に大陸から飛来してくるだけ。繁殖に取り組む自治体もあるけど、日本で野生のコウノトリの姿を見られる機会はめったにない。


私は子どもの頃からファンタジー世界が好きだけど、現実に生きる動物も好きだ。だから、珍しい鳥を見られる! とその意識だけで、今までの葛藤なんて全部吹っ飛んだ。


「は……はい! よろしくお願いします」


あっさりとyesの返事をして。ハッと我に返ったのは、細かなやり取りをした後で。 がっくりと肩の力が落ちる。


後悔先にたたず……でした。

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