あなたのヒロインではないけれど
「ずいぶん氷上に気に入られてるみたいね」
もぐもぐとチョコレートを食べながら、運転を続ける仲田さん。
「いえ……それは……ただ……仕事のためだと」
「そうね」
3本目のシガレットチョコレートをくわえた仲田さんは、器用に片手でアルミを破く。
「あいつは仕事が出来るからね。今のままでも十分だけど、結城の後を継いで主任の噂もある。ただし……今年のクリスマス商戦の結果を出せれば、の話だけどね」
「…………」
なぜ、部外者である私に仲田さんはその話をするんだろう?
しかも、まだ確定段階ですらない人事に関わる話を。社内ならともかく、無関係な私に漏らしていいんだろうか?
何も答えられないでいると、仲田さんは次のシガレットチョコレートを出そうとするから、先にアルミを外して渡したら「ありがとう」とそのままくわえた。
「……たぶん、氷上は主任の地位を望んでる。そのためには今回の仕事が失敗するわけにはいかないと考えているはず。だから……お遊びや中途半端な覚悟なら、今のうちに辞退すること。うちも不確定要素の商売で損害を出すわけにはいかないものね」
きっぱりと、仲田さんから“覚悟がないなら引き下がって”と告げられた。
男性を入れずに送ってくれたのは、このためだったんだ。