あなたのヒロインではないけれど



自分の背格好を客観的に見ると、小柄でちょっと痩せ気味。細いと言えば聞こえはいいけど、女性としては丸みが足りない。


「……お姉ちゃん、あの……」

「なに?」


冷蔵庫からピーナッツバターを取り出した姉に、躊躇いながらも疑問をぶつけた。


「やっぱり……男のひとって……その、女性らしい体型の方が嬉しい……んだよね?」

「そうね。顔、胸、腰、お尻、足。男がよく見る部分。男はパーツ単位で女を見るからねえ。ぶっちゃけ、細っこいよりは多少むっちりとした肉感的な方が良いみたいよ」

「……む、むっちり」


現在8人目のカレとお付き合い中の姉は、やっぱり何もかも未経験な私より男性の心理に詳しい。自分の体を見下ろすと、出るのはため息ばかり。“肉感的”にはとても遠い……。


トースターから取り出された二枚の食パン。いつもは一枚食べるのもやっとだけど、ピーナッツバターを最初の一枚にこってりと塗る。


「が、頑張って食べる……」

「うん、食べな食べな。あんたはもっと体を作らなきゃ。また貧血出ちゃうからね」

「……うん」


余計なことを訊かない姉に感謝しながら、ココアで何とか2枚目のパンを食べきった。


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