恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

夏の日の奇跡

札幌大通り公園のバラ園前は、華やかな香りに包まれた。


6月に入るや否や、グッドニュースが飛び込んで来た。


里菜から、那覇の美容室を辞めて与那星島に戻ったとメールがあった。


ついに夢の実現への第一歩を、里菜は踏み出したのだ。


7月に入ったら美容院の着工工事が始まり、秋には里菜の店がオープン予定だ。


あたしはSOUL NOTE の前を通るたび、じっとりとした目付きで覗き込んだ。


「怪しい。絶対、怪しい」


本当にパワースポットなんじゃないか、と思わずにはいられない。


この店には何かあるんじゃないか、と。


緋衣ちゃんはあくまでもうわさだと言っていたけど、これはまんざらではないかもしれない。











7月。


大通り公園では本州に遅れて紫陽花が満開を迎え、同時にラベンダーも見頃を迎えた。


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姉ェネェ、元気ですか。
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また暑い季節がやって来ました
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いま、島はちょっとした騒ぎに
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なっています。
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島に初の美容院ができるって。
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あのオバアでさえ興味津々です
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この前、オバアのとこにウシラ
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シがあったそうです。
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カフーなウシラシだって。
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姉ェネェがカフーでありますよ
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うに。
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          美波
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ゆるい風が吹いている。


高層ビルの合間から見えるのは、心が洗われるような青い空。


7月15日、日曜日。


あたしは約半年振りに、東京の地を踏んだ。

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