蝉鳴く季節に…
「綺麗な月が見えるって…」

「……あ」





思い出した。






杉山くんに言われて、私は月を探したんだよね。


でも見えなくて、笑われて……。








杉山くんは……抱きしめてくれたんだよね。










思い出したら、頬に熱さが込み上げてくるのを感じた。







「水谷、顔赤いよ」

「違うよっ」

「何が違うの?俺、何も聞いてないよ」

「え…あ……夕陽で赤いんだ…と、思う」






何それと、杉山くんは笑った。








「水谷って、わかりやすいよな。すぐ顔に出る」

「えっ!何もないよ」

「ははは…そういうトコが面白い」

「………」





面白い…喜んでいいのかな。






更に首を傾げる私の頭に、軽い重み。





杉山くんの手が、頭を撫でてくれていた。


心地良い、重み……。








視線を上げる。


そこには、杉山くんの優しい、優しい笑顔……。



大好きな大好きな……。









「俺、水谷と会えて良かったな」

「…杉山くん?」

「ずっと一緒にいたいって感じる……ほっとするんだ」
< 108 / 131 >

この作品をシェア

pagetop