蝉鳴く季節に…
「ねぇ、千秋。昨日杉山に会えた?」


次の日、興味津々に声を掛けてきたのは梨絵。





朝のホームルーム前。
ざわざわと、みんなの声や椅子を引く音が交じりあう教室。


笑い声…。









「うん、まぁ…」


私は、曖昧に返答した。




周りの雰囲気に合わせて、はしゃいで話す気分じゃなかった。
そんな風に、軽く話題として乗せちゃいけないって、何となく思っていたんだ。



なぜかはわかんない。
けど、杉山夏生を…杉山くんを、そんな風に扱いたくなかったんだ。






「杉山、元気そうだった?」

「うん、多分…」

「多分?」

「だって、そんなに話してないから…」






そっかぁ…と呟いた梨絵は、いつもの様に机の上に腰を降ろす。


短いスカートを少し下にずらしながら、梨絵は短いため息をついた。




「杉山って、何の病気なんだろね」

「…さぁ」












………髪が無かった杉山くん。


隠す様に、キャップを深く被ってた。






それに触れる事はできなかった。

軽い病気ではないのかもしれないって思ってしまって、会話みたいに聞く事なんてできなかったんだ。




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