蝉鳴く季節に…
「私、届けます」

「でもなぁ。昨日も頼んじまったのに」

「帰り道ですから。それに私、病室もちゃんと覚えてます」







自分で自分に驚いてた。

何を言い出すんだろうって。
自分はどうしたんだろうって。


表面では冷静を保って、何て事無いからって装っていたけれど…。






多分、隠しきれていなかったかもしれない。








だって、ドキドキしてたから。

すごくドキドキしてた。




押しの強い自分に、動く事ができた自分に……ホントはドキドキしてたんだ。



私って、こんなだった?って。









口実を、求めていたのかもしれない。



病院に行ける口実。

杉山くんと話す口実。






どうして話したいのか、はっきりとはわからない。

何を話したいのかも、全然わからない。


考える余裕が無かったのかもしれない。







ただ、祈ってた。


祈ってたんだ…。







お願い、先生。
私に頼んでって。





それに、先生が顧問をしているバスケ部は、夏の新人戦が近いから、忙しいに決まってる。




「大丈夫です。私、行けますから」

「そうかぁ?」



う〜ん…と、唸りながら考えてる先生。

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