蝉鳴く季節に…
杉山くんは慌ててた。


ベッドから上半身を起こして、うつむいて泣く私の顔を覗き込む。






「何泣いてんの?水谷」

「違うの…」

「何が違うんだよ」

「安心して…びっくりしたから…」

「どうして?」

「だって…だって……点滴いっぱいだし、変な機械あるし……杉山くん…目を覚まさないし……何回も呼んだのに…いっぱい呼んだのに……」

「……それで泣いてんの?」





うつむいたまま、こくんと頷いた私に、杉山くんは声を上げて笑い出した。







「あははは!俺眠ってただけだよ?」

「だって…杉山くんの病気が重くなったって…」



私の言葉に、杉山くんはぴたりと笑いを止めた。

一瞬…瞳が真剣になる。





「誰が言ってたの?」




その瞳に…私は…呼吸が止まる様な感覚を受けた。


怒ってるみたいな……。





「誰がそんな事を言ってたの?」

「……梨絵が………陸上部の矢代くんが…話してたのを……」






返答に、杉山くんはうつむいた。



……小さな…舌打ちの音…。






恐い顔………杉山くん…怒ってるの?




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