蝉鳴く季節に…
15
時間は、楽しい時に限って早く過ぎていく。

杉山くんと話していると、いつもそう思う。




ベッドのサイドテーブル上にある、小さな目覚まし時計は、もう七時を回ろうとしていた。



病院の面会時間は、八時までなんだ。







「私、そろそろ帰るね?」

「え?もうそんな時間?」


杉山くんは瞳を見開き、目覚まし時計に視線を移した。




「ホントだ。時間過ぎるの早くね?」




思わず吹き出した。

私と同じ事考えてる。



「いっそ泊まってく?」

「無理だよ」

「はは…だよな?」





笑う杉山くん。

でもその声には力が無くて、淋しそうにも感じた。


まるで、一人を恐がる子供の様で…捨てられている仔犬の様で……。



胸が、締め付けられる……。






「明日も来るよ?」

「うん」

「眠ったら、すぐ明日になるよ?」

「うん…」






うつむいた杉山くんの白い肌は、窓から差し込む夕陽の色を吸い込んだ様…。


綺麗だけど…だけど……。






そんな顔…しないで。


私は特別、なんて思ってしまいそうだから…。



だから……。

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