ブラックバカラをあなたへ
夜中に帰ってきた私は、お風呂に入りもせず、ベッドにダイブした。




プールで怪我した足首はもうすでに治っている。




2人のために私はどうするべきなの…




布団に顔を埋めて考えているうちに、私はいつの間にか眠りについてしまった。




どれぐらい寝ていたのだろうか、何かの音で私は目覚める。




重い眼を擦って、音のする方を探る。




それは私の鞄の中で鳴っていて、すぐに携帯の電話の音だと気づいた。




携帯を取り出し画面を見ると、知らない番号からだった。




不思議に思いながらも、とりあえず出てみる。




「もしもし」




寝起きのせいか低い声が出た。




「やあ、久しぶりだね。葉音」




少し間を開けて、そう切り出した相手の声に私の手が震えだす。




「どうして…お父さんが…っ」




父、庭造院八代。




自分の親だが、得体のしれない男。




「娘に電話をするのはダメなのかい?」




電話越しなのに、気持ち悪いほどに優しく笑う父の顔が容易に想像できた。




冷汗が頬を伝う。




眠気なんて一瞬で吹き飛んだ。




「用件はなんですか…」




息が苦しい。




全身が震える。




「葉音に会わせたい人がいるんだ。今週末、迎えを出すから帰っておいで」




嫌だ、そう言いたいのに言葉が出ない。




私はいつまでたっても父に逆らえない。




「…分かりました。それでは、失礼します…」




そう言って、電話を切ろうとしたけれど、




「そういえば、君のせいでまた人が死んだね。可哀そうな葉音」




その言葉に私は固まる。




父の声が頭の中で反芻される。




部屋に電話の無機質な音が響いた。




私のせいで…私のせいで…死んだ…また死んだ…人が死んだ…




私のせいで、私のせいで、私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで私のせいで




「私の…せいで…あは…ははは…アハハ!」




ねえ、お父さん、そんなことを言うんだったら早く私を殺してよ。




私は可哀そうなんでしょ?




憐れんでくれるんだったら、こんな風に私を育てたその手で壊してよ。




いつまでこんな人生が続くの…もう私は疲れたよ…
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