俺と結婚しろよ!
胸を激しく鷲掴みにされ、ゆさゆさ揺さぶられ、目が離せなくなる。
Fのライブには何回も行ったことがある。
だけど、今日のライブは格別だ。
賢ちゃんはあんなに遠いところにいて、みんなの注目を浴びていて。
でも、きっと、あたしのことを考えてくれている。
あたしのことを考えて、あのドラムを叩いているんだ。
セットリストはどんどん過ぎていった。
胸を熱くし、涙を必死に押さえ、ドラムソロに狂った。
MCでは大抵碧と艶が話していたのだが……
「玄。何か話しておくか」
不意に話をふられ、マイクを向けられる賢ちゃん……いや、玄。
ドクン……
胸が最大の音を立てる。
そして、その声はマイクで拡張され、広い広いアリーナに響き渡った。
「俺、疲れた」