俺と結婚しろよ!





そして、賢ちゃんも黙っていない。




「アレやろうぜ!

優弥に却下された、リハのMC」



「おっ!いいね」




慎吾さんが頷いた。






完全に賢ちゃんたちのペースに乗せられているあたし。

何も言えず、ただお馬鹿なFを傍観する。






蒼さんはわざとらしく咳払いをして言った。




「どんな娘が好きなの?」



「そうだな。

……新沢咲良!

おめぇだよ、おめぇ!!」



「はい、咲良さーん!

ステージ上がって!」





何なの、これ。

これこそ茶番だ。




唖然とするあたし。

そんなあたしの手を、無理矢理引く賢ちゃん。

賢ちゃんの触った場所がすごく熱くて。

そこから真っ赤になって、ドキドキするんだ。






ふと賢ちゃんを見上げる。

少し濡れた黒髪。

上がった口角。

笑って細くなった瞳。

全てがあたしのツボをくすぐる。

こんなあたしの気持ちなんて、賢ちゃんは分かっていない。

あたしの手を持ったまま、茶番を続ける。





< 256 / 451 >

この作品をシェア

pagetop