俺と結婚しろよ!
「咲良ちゃん」
不意に優弥さんに名前を呼ばれ、ビクッと飛び上がる。
怖い。
その感情はもちろんある。
だけど、名前で呼ばれるなんてびっくりして。
「ほらほら、優弥、怖がってるじゃん」
そうやって横槍を入れる慎吾さんを、
「うるせぇ!黙れ!!」
なんて怒鳴ったりして。
今、あたしがこんな場所にいるのが信じられなかった。
「咲良ちゃん。
悪ィな、馬鹿ばかりで」
優弥さんはため息混じりに言う。
「申し訳ねぇけど、このFの崩壊具合、黙っててくれるか?」
「はい」
否定なんて出来るはずなくて。
大きく頷くあたし。
「それでこそ咲良だ」
賢ちゃんは、あたしの記憶の中と同じ笑顔で笑っていた。
明るくて、いたずらそうで、それでいて豪快で。
あたしは、賢ちゃんともっと仲良くなりたいと心から思った。