甘いささやきは社長室で



「改めまして、ビストロ・エメ代表取締役、椎葉尊と申します」



気を取り直し、一度席に着いた僕とテーブルを挟んで向き合う形で座る彼……椎葉社長は、改めて挨拶をし直すと、座ったまま深々と頭を下げた。



「いやぁ、噂に聞いていた通り、桐生社長イケメンですね。同性でも見とれますよ」

「いえ、とんでもない」



椎葉さんは人懐こそうな笑顔で挨拶をする。

それに応えるように笑顔で返すけれど、頭の中は、元カレとはどういうことなのか、いつどうして付き合っていつなぜ別れたのか、全てこと細かに聞き出したい衝動でいっぱいだ。



「それにしても驚きました。絵里……いえ、真弓さんが社長の秘書をされていたなんて」

「こちらも驚いてますよ。まさか彼女が椎葉社長とお付き合いがあったとは」



自然なフリでその話題を振ると、椎葉さんは少し照れたように笑って髪をかく。



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