甘いささやきは社長室で
「いっぱい食べてもっと肉付きよくしておいで。男はムチムチで肉感的な女性にそそられるからねぇ」
が、その唇が発するひと言は、どう聞いても余計なひと言で……。
「っ〜……セクハラ!!」
「いった!!」
革靴の上からヒールでぐりっと足を踏むと、痛みに顔を歪めた彼から体を離す。
そしてズカズカと歩き隣の秘書室から手荷物を取ると、フロアをあとにした。
ったく、あの男は!!
なんでいちいち触るかな!
悪かったな、肉感的とは無縁な体型で。どうせガリガリですよ、とふて腐れながらエレベーターのボタンをバシッと叩く。
けれど、洋服越しに感じた腰に触れた手の感触を思い出すと、また胸はドキ、と鳴った。
ああもう、むかつく。
忘れてた、あいつはいきなりキスをするような軽い男。うかつに近づかない!