甘いささやきは社長室で



「い、いきなりなにするんですか……」



気の抜けた声で問う私に、桐生社長は近い距離のまま満足げな笑みを浮かべた。



「僕以外にシッポ振った罰」

「シッポ……?」



って、なんのこと?

意味が分からず首を傾げると、エレベーターはポン、と音を立てちょうど12階についたことを知らせる。



「けど前ほど拒まなかったね。もしかして、気持ちよかった?」

「なっ……!」



気持ちよかった?なんて。

どこか図星を突かれた気もして、顔がかぁっと赤くなる。そんな私の反応を見て一層楽しそうに笑うと、桐生社長はまた顔を近付ける。



「ご所望なら、続きもしようか?」



耳もとでボソ、と囁く低い声にますます顔は赤くなる。

そのタイミングで開いたドアに、彼は体を離すと上機嫌に降りていった。



「っ〜……なんなの……」





いきなり、またキスをするなんて。最低、最悪、訳わからない。

そう思うよりも強く、耳の奥にじんじんと低い声が響いている。

ドキドキ、してる。



「……ちょっとは見直したと思ったのに」



真面目な人で、照れ屋な人で、だけど結局こうして心を揺らす人。

あんな軽い男のキスにドキドキしてる。そんな自分も、訳わからない。







< 99 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop