『忍姫恋絵巻』


「才氷様、お食事足りていますか?」


ボーッとそんな事を考えていると、そこに伊津菜さんが話しかけてきた。


「あ、うん!ありがとう、伊津菜さん」


笑顔向けると、伊津菜さんはあたしの隣に座り、不意にあたしの手を両手で握りしめた


「えっ……?」


急に手なんか握ってきて、菜津菜さん、どうしたんだろう。
不思議に思っていると、伊津菜さんが口を開いた。


「ご当主様には、私たちには分からない苦悩があるのでしょう」

「!!」


まるで、あたしの考えている事が分かっているかのような言葉に、あたしは驚いた。


「才氷様の背負っているモノを私は知りません。ですがどうか、お一人で抱えて、悲しまないでくださいませ」


「伊津菜さん……」


すごく、優しくて聡明な人なんだ。
さすが、先崎の奥さん。


「やっぱり、悩んでるように見える?」


あたし、あんまり感情は表に出さないようにしてるんだけどな。


「というより、少し寂しそうな顔をしていました」

「寂しそう……あながち、間違いじゃないかも」


あたしは、誤魔化すように笑った。


この空間にいても、あたしはどうしても赤や家光、春日局様がいたあの場所を思い出してしまう。





















< 176 / 272 >

この作品をシェア

pagetop