『忍姫恋絵巻』
「才氷様、お食事足りていますか?」
ボーッとそんな事を考えていると、そこに伊津菜さんが話しかけてきた。
「あ、うん!ありがとう、伊津菜さん」
笑顔向けると、伊津菜さんはあたしの隣に座り、不意にあたしの手を両手で握りしめた
「えっ……?」
急に手なんか握ってきて、菜津菜さん、どうしたんだろう。
不思議に思っていると、伊津菜さんが口を開いた。
「ご当主様には、私たちには分からない苦悩があるのでしょう」
「!!」
まるで、あたしの考えている事が分かっているかのような言葉に、あたしは驚いた。
「才氷様の背負っているモノを私は知りません。ですがどうか、お一人で抱えて、悲しまないでくださいませ」
「伊津菜さん……」
すごく、優しくて聡明な人なんだ。
さすが、先崎の奥さん。
「やっぱり、悩んでるように見える?」
あたし、あんまり感情は表に出さないようにしてるんだけどな。
「というより、少し寂しそうな顔をしていました」
「寂しそう……あながち、間違いじゃないかも」
あたしは、誤魔化すように笑った。
この空間にいても、あたしはどうしても赤や家光、春日局様がいたあの場所を思い出してしまう。