全てをくれたあなたに

「真白ちゃん、それは涙っていうのよ。」





『・・・涙?』





「えぇ。どうして溢れてくるのか分からないんでしょう?」





『分からない・・・。なんで出てくるの?
どうしたら止まるの?』





「ふふっ、大丈夫よ。もうすぐ龍二が帰ってくるわ。どうして溢れてくるのか分かるまでには時間がかかるけれど、その涙は龍二が止めてくれるわ。」





そう言い終わると同時に部屋の扉が開き、龍二と眼鏡をかけた男の人が入ってきた。




龍二は私の顔を見ると一目散に駆け寄り、





「真白、なぜ泣いている?
お前を泣かしたのはなんだ?」




と優しく聞いてきた。





後ろで眼鏡の人がブッと吹き出しているのが見えた気がした。





『龍二さん、どうして涙が溢れてくるのですか?』





「・・・は?」





私に聞いたのに私から逆に質問されるとは思わなかったのだろう。
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