無垢なメイドはクールな彼に溺愛される
書類をずらしてジッと睨む西園寺常務は、
「――誰?」と、聞く。
そんな相手はいるのか? とは聞かずに、具体的に聞いてくるあたりがいかにも彼らしく、
迂闊なことを言った自分に呆れ、心の内で溜め息をついた。
もちろん本気で結婚を口にしたわけではない。
これ以上この勘が鋭い上司が余計な関心を抱くことがないようにと願いながら
「これから急いで探します」
と、鈴木はおざなりに答えた。
そして、
「二枚目の書類について、どう思われますか?
杉田専務の話と営業部長の話に食い違いがあるのが少し気になります」
そう仕事の話を続けて、雑談を打ち切った。