無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

 人で溢れる地下鉄駅前。広い通りを右折して中に入っていくと、景色は一転する。

 豪邸を隠す要塞のような高く長い塀が続き、人影もまばらになる高級住宅地。



――彼女はこの梅濤にいるのだろうか?



 バーのカウンターで呟くように彼女は言った。

『惨めになったんです』

『……みじめ?』


 惨めだという言葉が彼女にはあまりにも不似合で、最初は聞き違えたかと思った。


『私は!…… 私は決して惨めなんかじゃない……

 パパの顔は覚えてなくても、
  どんなに寂しくても…… それでもママはがんばって育ててくれて…

 ずっと幸せなのに
 それなのに
 そんな風に思ったことが、悔しくて』
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