無垢なメイドはクールな彼に溺愛される

――同じだ


 彼女がアドレス帳に記録を残さないのと同じように、

鈴木も肝心な番号は残してはいなかった。


 ごく一部の人間だけが知る西園寺常務のホットラインなどは記憶の中にあるだけだ。


 西園寺ホールディングスでは上から末端の社員に至るまで、

仕事で使う電話端末は全て指紋認証で統一してある。


 万が一紛失した時のことも考えて一切の記録を端末本体に残さないシステムが組み込まれているのだ。


 なので、そもそも心配はない。



 だが、彼女は青木家のメイドにすぎないので、情報漏れを案じ自分で考えたのだろう……。


 絶対に青木家に迷惑をかけてはいけないと、考えた結果があの何もわからないスマートフォンになったのだろうが、


 なにもかもを記憶するのはそれだけの強い意思と努力の賜物に違いなく、


 酔ってもなお背筋を伸ばしていたあの姿勢が、


 誇りあるメイドの矜持の現れだったのだ……。
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