籠姫奇譚
珠喜は名残惜しそうに部屋を出ると息をついた。
会いに来てくれる、それだけで、その一言だけで幸せになれる。
彼はいつも、昼見世にしか来てくれない。
それゆえ夜になれば、また別の客をとらねばならないのだ。
「あげは、お前は部屋へ戻ってお休み。もう疲れたでしょう?」
「でも……」
「いいのよ。……わたくしの言う通りに、ね?」
妹のように思っている彼女には、客の相手をしている自分の姿など見せたくなかった。
「……はい」
あげはは、小さく返事をすると申し訳なさそうに引き返していった。
あげはの姿が視界から消えると、珠喜はほぅっと息をついて、客の待つ部屋へと向かった。
「──珠喜、逢いたかったぞ」
そこで待つのは、嫌悪感を抱かずにはいられないような、欲に溺れた醜い男。
「──わたくしも」
嘘ばっかり。
本当に、呆れて笑いがこぼれそうだ。