瑠璃色の姫君




僕の言葉に、少年は目を見開いた。



「いいの! やったー!!」



パァァア、と白い顔を血色よく赤くして喜ぶ少年は、少年らしい幼さを感じる。


ここまで嬉しそうにされると、承諾して良かったと思えてしまう。


承諾したからには、少年を守ってあげなくては、と変に責任が重くのしかかるが、今だけは気にしないことにする。



「じゃあ、ガレットの店にレッツゴー!」



少年は、僕の手を引いて楽しそうに駆け出そうとした。



「ちょ、なんでお前が仕切ってんだよ」



そう言いながら、僕は彼の肩を掴んで勢いを止めた。



「えーと、フリュイ、だっけか」


「うん!」


「いきなり走っちゃダメだ。こけるぞ」


「うん。気をつけるね、バベル!」


「いきなり呼び捨てかよ…」



王子の威厳はどこへやら。


でも名前を呼ばれて嬉しそうにするフリュイを見れば、いいか、と思った。


旅は退屈しないで済みそうだ。



「バベル、行こ行こ」


「はいはい」



繋がれた右手は小さくて、僕はくすりと笑った。


ガレットの店というのは、5年程前に、1人で街をぶらついた時に、見つけた街から少しはずれた場所にある隠れ家みたいな服屋さんだ。


店長のガレットとは、気が合って、城を抜け出す度に、彼に会いに行くほど彼とは仲がいい。


店で何かを購入したことはなかったけれど、色んなジャンルの服が飾ってあって、毎度目が回りそうになる。


ガレットの店なら、旅に相応しい品がありそうだ。



「バベルー、早くー」


「はいはい。走るなって」



僕らはまず、ガレットの店を目的地として歩みを進めた。




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