瑠璃色の姫君





渋々って感じでゆっくり外されたレティの手。


ほんのりと色の乗る唇が現れる。



「うわ、なんかドキドキする」



最近キスなるものは、口を外したところにしかしていなかったため、妙に胸が鳴る。


ちなみになぜ口を外してばかりかというと、レティがそうさせてくれないからだ。


恥ずかしがり屋でツンデレな彼女と一緒になるとこうなるのだ。



「そゆこと言うな、バベルのばーか!」



ドキドキが伝染したようで、レティがそれを隠すように毒を吐く。


隠しきれてないし、それも微笑ましくて僕のドキドキが増加しちゃったんだけどね。



「口の悪いお姫様」


「うるさいっ」


「そんなお口は僕がふさいであげましょう」


「何その言い方、気持ち悪っ」


「………ほんと口悪いね」


「だって、」



まだしゃべろうとする彼女の口を強引にふさぐ。



「だって、何?」



離して、目を覗き込んでそう尋ねる。


彼女は「なんでもない」と噤んだ。



「ダメ、気になる。教えて?」


「嫌」


「お願い」



手を合わせてねだれば、小さく何かを言われたけれど、残念ながら聞こえなかった。



< 218 / 248 >

この作品をシェア

pagetop