瑠璃色の姫君




「無理に時間作らなくていいよ?」



いや、本当は無理にでも作ってほしいけど。


ちょっと不貞腐れぎみに言えば彼が口を手の甲で抑えてくくく、と笑った。



「大丈夫。僕にとってレティよりも優先することはないから」



またさらりとイケメン発言をした彼は、椅子から立ち上がって私の手首をぐいっと引く。


わ、っと声を出すのもつかの間、すぐさま彼の胸に顔が押し付けられ、ぎゅうっと柔らかい暖かさに包まれる。




「バベル珈琲くさい」


「珈琲じゃなくてダージリン。いい加減覚えて」


「うるさい。珈琲でいいの」


「ダージリンは紅茶だから」


「いいの、いいったらいいのー!」


「色も味もだいぶ違うけどね」


「もうっ、いいって言ってるじゃん。バベルのばーか!」



大人しく抱きしめられながらも口は達者で可愛くない言葉ばかり溢れる。


やだなぁ、フリュイの時少年らしさを意識して話していたからかな。


彼と話すときはもう随分とこの調子である。


可愛くないなぁ……。


先ほど話していたリーシャは、彼女と同じくカフェ・レヴで働く幼なじみのゼノとお付き合いを始めたらしい。


それを報告に今日来てくれたのだが、頬を真っ赤に染めてりんごみたいで、とても可愛らしかった。



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