チェロ弾きの上司。
チェロ弾きの上司との春〜II〜

「望月、オレ外出するから、メールで送っておいた資料作って、今日中に共有フォルダに入れておけ」

真木さんがあたしの顔も見ずにそう言い残して出かけていった。

ホワイトボードには、クライアントさんの名前と、直帰する旨が書かれている。


今日は水曜日。オケの練習日。
ボロボロだった前回から、もう一週間か……。
ここ一週間、ほんとにスケールしか、それも少ししか弾いてない。


ただいま、午後5時。
定時まであと1時間。

メールを開いて、内容を確認する。
パワー全開で仕事ができるなら、あと1時間で終わらせることはできる。
だけど、今日の体調は最悪。
能率が上がらず、午前中から仕事が押してきてた。

この分じゃ、明日の朝に回すこともできない。

「望月さん、顔色悪いよ。もしかして、アレ?」

隣から佐倉さんがささやいてきた。

「はい……。薬は飲んでるんですが……」

今回の生理痛は重い。

1月・2月と仕事が忙しかった上に、カルテットの練習でちょっと無理しちゃったから、今になって体調にしわ寄せが来てる。

今までは自分で仕事のスケジュールを調整して、生理中は頭を使わなくて済む仕事を持ってきてたけど、最近は仕事が増えていて、それができなくなってた。

< 113 / 230 >

この作品をシェア

pagetop