チェロ弾きの上司。
ヴァイオリンケースを開ける。
カバーをとると、メープル色のヴァイオリンが横たわっている。
あたしはそれにしばらく見とれる。

……綺麗だなぁ。

いえ、決して高級品ではないんですが。
(とはいえ、中古車くらいは買えるけど……)

形はよく見ると、すこーし、歪んでるし。
傷はついてるし。
三神さんの楽器のように、芸術品のような完璧な美しさではないけれど。

その完璧でないところが、愛らしい。

あたしは約10年使ってきた愛器を取り出し、そっと抱きしめる。


今日も、元気に、楽器を弾けることに感謝します。


……以上、いつもの儀式終了。

さ、練習しよ。

昨日のオケの全体練習におけるファーストヴァイオリンパートの反省点と課題は、その日のうちに三神さんからパートのみんなへメールが送られてきていた。
これ、毎回。
三神さん、こういうところ、ほんと真面目だし、マメ。
すごいなぁ、と尊敬する。
この情熱に応えなきゃ、って気になる。
おかげで、うちのアマオケのヴァイオリンパートは、なかなかレベルが高いと言われてる。えっへん。


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