チェロ弾きの上司。

そんなことを考えながら唇を離したら。

ぐいっと抱き寄せられ、真木さんの腕の中にいた。

……あったかくて、気持ちいい。

「ん、やっぱりお前は抱き心地がいいな」

お肉がついてるってことですか?

「じゃあ、頑張ったご褒美をやろう」

何だろ。
あまりいい予感はしませんが。

「もっと気持ちいいキスの仕方、教えてやるよ」

はっ⁉︎
まさか⁉︎

と思った時には、上を向かされ、唇を塞がれていて。

うわー、やっぱり!

唇、舐められてる!
吸われてる!

真木さんてば、ちょっと、エロいです……!

でも……気持ちいいや……。


すると、舌がするりと入り込んできて。
逃げるあたしの舌にからんできて。
やわやわと、あたしの舌がなぶられて……。


うわぁ……
こんなキス、初めてだぁ……。

好きな人にこんなことしてもらえるなんて、生きててよかった、なんて思っちゃう……。


真木さんの唇が離れたのを機に、身体を離そうとするけど……

うそ。
身体に力が入らない……。
これは、もしや、アレですか?

「どうした?」

「あの、腰が抜けたみたいで……」

言った途端、真木さんが爆笑した。

ちょっとあの、笑い事じゃないですから!

「結構手加減したつもりなんだが、そうかそうか。じゃ、しばらくこうしとけ」

嬉しそうにまたあたしを抱き締める真木さん。


……新しい世界には、気持ちいいことも、恥ずかしいことも、たくさんあるみたいです……。



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