チェロ弾きの上司。
……って、変態か、あたし。
けど、後ろの彼の方がもっと変。
「みや、もっと声出せよ」
楽しそうに言うんだ。
「……何でですか」
「後ろからこうしてると、楽器弾いてるみたいで、面白い。チェロ弾きとしてはたまらないな」
同じこと考えてたとは……。
「……頭おかしくなってませんか」
自分のことは棚に上げておこう。
「仕方ないだろ。好きな奴といるとおかしくなるんだよ」
……わを。
あ。そういえば。
「そういえば、あたしを好きになった理由、考えておくって言ってましたけど、わかりましたか?」
「……ハーモニーと転調と変拍子」
「…………」
頭おかしいレベルは、確実にあたしより上をいってる。
「じゃあ、みやは? 何でオレのこと、好きになったんだ?」
うーん。
……何でだっけ?
あたしは、彼と出会った一年前を思い出す。