チェロ弾きの上司。




「小1の娘が、テレビアニメの影響で、バイオリンやりたいっていうのよ」
「わーセレブだね」
「バイオリンって、体の大きさに合わせて楽器買い替えていかなきゃいけないんでしょ? お金かかるよ〜」

奇しくもオケの練習の翌日。
会社での昼休み。
あたしはお姉様方3人の会話に口を挟めず、黙ってお弁当のひじき煮を口に運んだ。

はい、まるでテンション違います。
ヴァイオリン弾いてる時はテンション高いけど、普段は大人しく地味に生きてます。

ここは首都圏にある小さなWebサイト制作会社。
あたしはここで事務をしてる。

ヴァイオリンというと、世間一般のイメージは先ほどの会話のようなものなので、あたしがヴァイオリン弾いてることは、会社の誰にも言っていない。言えない……。


でも……。


ランチが終わると、トイレで歯磨き&化粧直しタイム。
いや、あたしは直すほどの化粧はしていないんだけど、今日はちょっと……。

最後に残ったのは、さっき娘さんがヴァイオリン習いたいって言ってた、佐倉さん。
30代前半のWebデザイナーさん。素敵ママだ。

「あの、佐倉さん」

「んー?」
口紅を直しながら、鼻で返事をする佐倉さん。

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