チェロ弾きの上司。
今日は秋晴れ。
夕方になり、西陽が差し込んでくる。
陽が傾いてきたなぁ。秋だなぁ。

と感傷にひたりたいけど。
……さっきから、その陽射しが真木さんのチェロケースに届きそうでハラハラする。
真木さんの席は大きな窓を背にしてる。
チェロケースを窓際に置くなんてことはしてないけど、近くは近くなので、あたしとしては、非常に気になる。

真木さんは社長やデザイナーさん達と打ち合わせブースでミーティング中。

何であたしが真木さんの楽器の心配しなきゃいけないんだ。
確かに家に帰って楽器を取りに行く時間も惜しいのはわかるけど。
車の中に置いておくなんて暴挙、できるわけないんだろうけど。

あーもう。このままじゃ仕事に集中できない!

あたしは立ち上がって、ブラインドを下ろした。
楽器に罪はない。
人を憎んで楽器を憎まず、と唱えながら。

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