チェロ弾きの上司。
「まーまー佐倉ちゃん、そんなにいじめないでやってよ。こんなでも、彼女の前じゃ、すっげー優しいかもしれないじゃん?」
社長がフォローする。

「何よ、真木くんてば、ツンデレ?」
「は?」

「なるほど」
ツンデレか!
仕事で厳しく、音楽には優しい。
あ、でも優しいとデレデレは違うのか?

「ほら、望月さんも納得してるし」

え、なんでみんな爆笑してるの?
真木さんだけ、すっごく怖い目であたしのこと睨んでるけど⁉︎





そんなことがあったのに、何で真木さんと2人で駅まで歩かなきゃならないんだ。

ま、みんな二次会のカラオケに行くのに、断ったのはあたしと真木さんだったから、なんだけど。

いつもは車通勤のあたしたちだけど、今日は電車。

年の瀬だから人通りは多い。
真木さんは綺麗なお顔で、すらっと細くて、ブランド物のキャメル色のダッフルコートを着ていらっしゃるので、すれ違う女性が振り返る。
あたしは非常に居心地が悪い。
< 64 / 230 >

この作品をシェア

pagetop