チェロ弾きの上司。

……沈黙。

何か話した方がいいのかな。

「望月は……」

「はいっ」

何だろうか……。
さっきのツンデレのこと、怒られるのかなぁ。

「何歳から楽器やってるんだ」

ほっ。音楽の話か。

「9歳からです……」

「ふぅん」

……ええと。ここはきき返すべきよね?

「真木さんは……?」

「3歳からピアノ、6歳からチェロ」

どひゃー!
ヴァイオリンと違って、チェロを子どもからやる人って断然少ないのよ!

「どうりでお上手なわけですね……」

「うまいと思うか?」

「はい」

「三神よりも?」

ぐっと答えにつまる。

「……三神さんとは楽器が違いますから、比べる対象にはなりません」

どう、あたしなりに頑張ったこの返し。

「望月はいつも三神のこと見てるもんな」

「コンマス見るのは当然です」

「目がキラキラしてるしニヤけてる」

「それは、三神さんは、あたしが楽器始めた時から憧れの方ですから……」

「なに、三神と同じ教室なのか?」

「はい」

「どうりで弾き方が似てるわけだ」

「ほんとですかっ⁉︎」

思わず真木さんの顔を見てしまった。

真木さんは呆れたように笑い、うなづいた。

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