チェロ弾きの上司。

「真木、フレーズの終わりの音、押しすぎ」
「弱いとしょぼいだろ」
「変。ださい」


「真木、前に出過ぎ。もっと後ろに回りなよ」
「ここはこれ位いくだろ」
「バランスおかしい」


「お、今のいいじゃん!」
「すごいあおられた感じするけど」
「そりゃあおったからな」


三神さんと真木さん、言いたいこと言い合うから、ハラハラする。
それだけ仲がいいってことなんだろうけど。
友達に気を許してる、素の真木さんを見ると、何だか困ってしまう。

だって、

やわらかかったり、
いたずらっぽかったり、
笑ったり、
仕事では見たことがないプライベートの表情をたくさん見るんだもの。

あたしはそのたび、

ドキドキしたり、
うれしかったり、
恥ずかしかったり、

……心の処理能力、キャパシティオーバー。

上司とカルテットなんてやるもんじゃない。


曲に集中しよ。
チェロの人は、ただのチェロが上手い人。
チェロの人は、ただのチェロが上手い人。
よし。


< 76 / 230 >

この作品をシェア

pagetop