不器用ハートにドクターのメス

わからないことがあればとことん突き詰め、理解すれば手放し、すぐに新しい疑問を見つける。

そのあくなき探究心は、外科医という職であることには大変向いていたが……それが恋愛に関しても同じ、というのが神崎の抱える難だった。

なにも、端から遊ぶつもりで手を出すわけではない。

興味は持っている。オトしたいと思う。

けれど、いざ相手を手に入れ、相手の底が知れてしまうと、まるで満ちていた潮が一気に引くようにとたんに興味をなくしてしまう。

それが、神崎の今までの恋愛パターンだった。

神崎がもう少し年若き頃には、自分の恋愛不適合っぷりに悩んだものだが……今となってはその性質をすっかり受け入れ、女は一夜限りでいい、一生身を固めずに、打ち止めするまで適度に欲を満たせられればいい、という考えに至っていた。

幸い、向こうからいくらでも寄ってくるので、神崎が女に不足したことはない。

神崎が行うべき作業は、言い寄ってきた女が割り切れるタイプか、執着してしまうタイプかを見極めることだけだ。

だいたい、神崎にとって人生で重要なのは、恋愛ではない。

女は二の次三の次で、神崎にとっての第一は、突出して仕事だった。

オペができればそれでいい。難しいオペに挑み、達成していく。自身の技術を極めていく。

それが、神崎の生き甲斐であった。


「教授に結婚結婚言われ続けるのが嫌ならさ」


不機嫌一色に彩られた顔をする神崎の隣で、堂本は、黄金色の液体が入ったグラスを揺らした。

やわらかく流した栗色の前髪の下には、悪戯っぽい瞳がのぞいている。


「偽装結婚でもすればいいんじゃないか?」

「……は?」

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