不器用ハートにドクターのメス
「貸せ。後ろに置く」
「あっ、あの、タオルとか、家に置いてきます……!」
「わざわざ戻らなくていい。必要ないものは後部座席に出しておけばいいだろ」
「は、はい……あの、」
神崎から旅行バッグを取り上げられた真由美は、そわそわと両手を体の前で組んで、頭を下げた。
「今日と明日、よろしくお願いします……!」
「……ふ」
付き合っている間柄とは思えない律儀な挨拶に、神崎はまた、吹き出すように笑ってしまった。
顔をうつむかせて、助手席に乗り込む真由美。
他人の目にはただ不機嫌そうにしか映らないだろうが、神崎の目は、そこに浮かぶ恥じらいや照れの感情をしっかりととらえることができる。
なにをしようが、なにを言おうが、神崎には、真由美がとても可愛いもののように見える。
すぐに触れたくなる。ずっと見ていたくなる。
付き合ってから、飽きるなんてありえないことのように、想いはどんどん増していく。
まるで別の人間に生まれ変わってしまったようだと、面白おかしいような、照れくさいような気持ちを抱きながら、神崎はアクセルを踏み込んだ。