不器用ハートにドクターのメス
そして、真由美が思春期まっただ中にいる頃、こう言ったのだ。
将来は、有資格の職につきなさいーーと。
一般企業の面接受けしないことは、考えるまでもなくわかりきっている。
なので、資格ありきの職業ならば、まだ採用してもらえる確率が高く、苦労が少ないだろうという配慮からの言葉だった。
かくいう真由美の父親も強烈な強面の持ち主で、就職の際には、大いに苦汁をなめた経験があったのだ。
その教えを素直に受け取った真由美は、よくよく考え、最初、保育士になりたいという結論に至った。
真由美は、外見とはうってかわって、大の子ども好きだったからだ。
しかし、近所の子どもにはことごとく怖がられ、子どもと関わるボランティアに出向けば号泣され、逃げられ、すっかり自信をなくした真由美が次に考えたのが、看護師の職だった。
子どもだけでなく、真由美は年輩者も好きだった。
人生経験を積んでこられた方から聞く話は大変有意義なものであったし、人相とは真逆で、真由美は人の役に立ちたいという、奉仕の心を持った心根優しい人間なのだ。
そういうわけで、真由美は晴れて看護学校に進学する運びとなった。
真面目にコツコツやるタイプなので、勉学面ではとくに問題はなかった。とくに問題ないどころか、ペーパーテストの成績はトップクラスだった。
しかし、実習先で、真由美は問題にぶち当たることになった。
担当患者との関係がうまく築けず、実習単位を落としそうになってしまったのだ。