不器用ハートにドクターのメス
その様子に、神崎は、まるで悪戯がばれてしまった子供のような気持ちと、どこか嬉しい、そんな二種類の気持ちを同時に覚えた。
「お、おはようございます……っ!!」
半分開けていた運転席の窓から顔をのぞかせる真由美。少し上ずった声が、神崎の耳に響く。
「あのっ、せんせ……今朝方、父から聞いて、あの……先生が迎えに来て、くださるって……っ」
「……おう」
あわてた口調で発言する真由美に、神崎は短く、ぶっきらぼうな挨拶をする。
ずいぶんそっけなくなってしまったのは、不可解ながら勝手にくちびるに浮かんでくる笑みを、無理やり抑え込んだせいだった。
「す、すみません……まさかこんな、とんだご迷惑なお願いを……」
「乗れ」
自分の口から出た短い命令に、ああ、また、と神崎は苦々しく思う。
さすがに真由美ほどではないものの、神崎も決して、口達者な方ではない。
なので、つい最小限に短く言ってしまう結果、強い印象の物言いになってしまうということが、日常では多々起こりうる。
怒っているようだったり、命令しているようだったり。
相手にどう思われようが、相手がどう感じようが興味がないので、神崎は、自身のその言葉足らずさをとくに気にしたことはなかった。
けれど、真由美相手に命令口調になってしまった時に限り、神崎はなぜか、軽く自省してしまう。
神崎にとっては、それも、不可思議な現象の一つだった。