いつか孵る場所
翌日、土曜日。

午前の外来が終わると透は入院患者の回診後、ハルを病室に迎えに行った。

「ハル、帰るよ」

そう言って透は部屋に入る。

ハルはベッドにちょこんと腰掛けていた。

一回り、体は小さくなっている気がする。

薄い水色のワンピースの裾が揺れ、ハルはベッドから降りた。

透はハルの荷物を左手に持つと右手でハルの左手を握る。

「透、みんなに見られるよ!」

ハルが手を離そうとすると透は更に強く握る。

「見られても構わないよ。
見られて困る関係でもない」

そう言って部屋の外に出る。



「…どうも」

透は伏せ目がちに周りを見る。

「お世話になりました」

透の普段聞けないような低い声が廊下に響いた。

部屋の前に看護師やクラークや…。

各診療部から2〜3名、様子を見に来ていると思われる。

「皆さん、僕の事はいいからちゃんと仕事してください」

冷たい視線を浴びせられたスタッフ達が慌てて逃げた。



「クスクス…」

ハルが肩を震わせて笑っている。

「ハルまで、何?」

透は少しムッとしていると

「透、皆に心配されているのね。まるで子供みたい」

「もう、ハルまでうるさい!」

透は繋いだその手を更に握りしめた。

「透、痛い」

「これくらい繋いでおかないと、ハルが逃げそうだし」

「逃げてもすぐに捕まえるでしょ?」

透は立ち止まった。

ハルも立ち止まる。

「もちろん。
…ハル、僕にずっと四六時中捕まえていて欲しいの?
なんだか凄い挑発をされているみたい」

透の目が悪戯っ子のように笑っている。

「これから当直以外はずっと監視するし、覚悟しろよ~」

そう言ってハルの額をちょこんと突いた。
< 145 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop